はじめよう!やってみよう!口腔ケア

嚥下体操

2025年11月05日 09:37

【口腔機能訓練】嚥下体操

嚥下(えんげ)とは「飲み込み」のことです。その「飲み込み」の筋肉をトレーニングする体操が嚥下体操です。

嚥下体操について

嚥下は、舌やお口のまわり、首などの筋肉を使って、食べものや飲みものをのどの方へ送り込み、のどを通過した食べものをさらに食道へ送り込む一連の動作を指します。
嚥下体操は、そのために必要な筋肉の体操です。

食べるときに使うのはお口だけではありません

食べものやだ液などを飲み込む際には、ほほ、舌、のどなどのお口の筋肉を使うことは想像しやすいですが、実はからだの筋肉も大きく関係しています。
食べる動作を思い出してみてください。
まずは目で食べものを認識し、おはしやスプーンを持ちます。次に手をのばして食器をつかみ、食べものを取り、お口まで運びます。

このときや肩の筋肉、腕や肩の筋肉がスムーズに協働して動くことで一連の動作が行えます。
さらに、食べる際には「姿勢」も大事な要素のひとつです。

適切な姿勢を保つことがむずかしいと、誤嚥のリスクが高まります。

また、万が一誤嚥してしまった場合、しっかりとむせることができると、気管に入ってしまった食べものを吐き出すことができます。この「むせる」という動作には、背筋や腹筋、そしてしっかりと足を地面につけて踏ん張る足の筋肉なども必要になります。

全身の筋肉がそれぞれの役割を果たすことで、スムーズに食べることができますし、また万が一の場合でも安全の確保ができます。

どれかひとつが欠けても、食べることは困難になります。

そのため嚥下体操にはお口だけではなく、からだの筋肉を動かす要素が含まれています。

嚥下体操で誤嚥予防

嚥下体操をおすすめする目的のひとつは「誤嚥予防」のためです。
誤嚥とは、通常食道に行くべき食べものや飲みものが、誤って気管へと入り込んでしまうことです。
食べものやだ液に含まれる細菌が原因で、誤嚥性肺炎を引き起こす危険性もあります。
詳細は「口腔ケアの目的と効果」ページの「嚥下のしくみ」と「誤嚥のしくみ」をご確認ください。


【ミニ知識】誤嚥と誤飲の違いとは

「誤嚥」という言葉は、ここ数年で広く知られるようになりました。

誤嚥とは、本来食道へ送られるはずの食べものが、誤って気管に入ってしまうことを指します。
では、「誤飲」とはどういう意味なのでしょうか。

一見すると、誤飲は飲みものなどの液体が気管に入ってしまったときに使う言葉のように思えますが、実は違います。
液体でも気管に入ってしまった場合は「誤嚥」と呼びます。
たとえば、誤嚥性肺炎は、だ液に含まれる細菌が気管に入ることで起こります。

一方で「誤飲」は、ボタンや電池など、食べものではないものを誤って飲み込んでしまった場合に使う言葉です。

万が一、誤嚥や誤飲が起こった場合には、医療従事者や救急スタッフなどに、状況を正しく伝えましょう。

食べるため以外にも

嚥下体操を続けていくことは、食べるための筋肉のトレーニングだけではなく、笑顔をつくることや、楽しくおしゃべりをすることにもつながります。 これは、使っている筋肉がほとんど同じためです。
筋肉は、動かすほどリハビリになり、バランスよく協力し合う動きへと改善されます。
ぜひ皆さんで嚥下体操をしましょう。

嚥下体操を行うタイミングについて

嚥下体操を行う一番おすすめのタイミングは、食事の前です。
嚥下体操でお口やほほの筋肉を動かすと、だ液が出やすくなり、食べものが飲み込みやすくなります。その結果、誤嚥を防ぐ効果も期待できます。

また、「テレビを見ながら」や「お風呂に入りながら」など、何かをしながら嚥下体操を取り入れるのもよい方法です。
大切なのは、無理をせず毎日続けることです。

「お食事の前のお口の準備体操」と思って、皆さんで楽しく取り組んでみましょう。

やってみよう!嚥下体操


ある程度からだに負荷をかけないと機能訓練にはなりませんが、ハリキリすぎて、肩や首を痛めてしまっては本末転倒です。実際に行う際には「無理や痛みのない範囲で」を心がけて、周囲の人やものとの感覚を十分に考慮しましょう。

嚥下体操は次の9つの項目で構成されています。


  1. 姿勢
    まずは姿勢を整えて座り、全身の筋肉バランスを整えます。

  2. 深呼吸
    鼻から吸って、お口から吐きます。長く息を吐くようにしましょう。
    嚥下体操をはじめる前に、気持ちや緊張した筋肉をリラックスさせます。

  3. 首の体操
    嚥下に関係する筋肉は、首に多く集中しています。
    筋肉をゆっくり動かして筋肉をほぐすことで、食べる準備をはじめます。

  4. 肩の体操
    息を吸いながら肩を引き上げて、スッと力を抜くように息を吐きながら肩を下げます。

  5. お口の体操
    お口の周りの筋肉をほぐし、動かすためのトレーニングです。大げさにお口を動かしましょう。

  6. ほほの体操
    お口の中に空気をため、ほほを内側から膨らませる筋肉のトレーニングです。しっかりかむために、また食べこぼし防止や鼻へ食べものがながれ込むのを防ぎます。

  7. 舌の体操
    食べること、そして発音をするために欠かせない舌。咀嚼時、嚥下時の舌の動きを保つことができます。

  8. 発音練習
    「パ・タ・カ・ラ」と発音することで、唇や舌を動かします。唇、舌の動きを目的別にトレーニングします。

  9. せきばらい
    誤嚥した際に、むせるためのトレーニングです。
    やりすぎてしまうとのどを痛めることもあるので2~3回程度でかまいません。


>> 「口腔機能訓練」ページに戻る >>